能力評価や、業績評価のお話をしている時に、いつも、頭に浮かぶのが、「キュウリとブドウ」のお話です。

これは、私が大好きな動物行動学者のフランス・ドゥ・ヴァールの2匹のオマキザルの実験の話。

最初、2匹のサルの両方に、「小石を渡すと、大好きなキュウリを交換」というゲームを行います。
この段階では、2匹のサルともに、喜んで、キュウリと交換のゲームを続けます。

そして、途中で、一匹には、今までと同じ「キュウリ」を、もう一匹のパートナーのサルには、サルが大好物の「ブドウ」と交換というようにルールを変えます。

すると、「キュウリ」を貰っていたサルは、もう一匹のパートナーが大好物の「ブドウ」を貰っているのを見た途端に、今までは嬉々としてキュウリとの交換を楽しんでいたのに、怒りだし、苛立ち、大好きなキュウリを投げ出しはじめる、というお話です。

自分の相棒がもっと良いものをもらっているのを目にした結果、普段だったら、大好きな食べ物でさえ、受け入れがたいものに変わる—「不公平嫌悪」という感情は、霊長類の時代まで遡る、ということです。

たとえば、米国・ヘッジファンドで年収●●億円も稼ぐ高給取りが、なぜ、さらに上の給料を求めて、ジョブホッピングするかの心理は、「自分と同等クラスの人間」がより高額の給料をもらっている場合、現在の年収●●億円が、「キュウリ」に見え、自分も「ブドウ」を貰わないと「不公平だ」と思うからです。

本当だったら、「キュウリ」で十分だったはずなのに・・。

 

ただ、この「不公平嫌悪」という感情は、集団が勝ち残る上でとても重要な要素。

もしこの心理が発達しなければ、集団内でフリーライダーが出没・温存され、利他的行動を取るものが少なくなり、集団そのものの存続が危うくなることが指摘されています。

そして、私たちは、約4万5千年前から、この「不公平嫌悪」というセンサーを持っていた人類の子孫です。

 

 

先般、話題となった「ティール組織(フレデリック・ラル―著)」の中で、進化型組織における個人評価は、上司ではなく、「同僚間の話し合いベースに基づいて(ピア・ベース)で決定」という項があります。

このピア・ベースというのは、現実の人事制度では難しい面も多々あると思うのですが、「不公平嫌悪≒だれも抜け駆けせずに、納得感」という、キュウリとブドウの心理を解決する1つの方法なのかもしれません。