今回は、今、米国で何かと話題のロビンフッダー(Robinhood traders) のお話です。

ロビンフッド

本家のロビンフッド(どうしても、ウィリアム・テルのお話と混在する・・・

ご存知の方も多いかと思いますが、ロビンフッダーとは、

「Robinhood(ロビンフッド)」-”すべての人に投資を- investing for everyone.””をコンセプトとする米国のフィンテック企業-

を利用する人達のこと。

 

・手数料不要

・Amazonなど1株3000ドル程度の株でも、皆で少額を出し合って買えること
(Invest in thousands of stocks with as little as $1. 少額でも投資ができるということ)

・スマホのアプリで簡単に取引できること

などなど、投資経験の少ないビギナーであっても、数ドルのお金があれば、スマホですぐに株式投資を開始できるハードルの低さもあって、米国のZ世代に大人気。
利用者の平均年齢は、31歳と言われています。

特に、コロナの被害が大きい米国で、遊びに行けない、家に閉じこもるばかり、それなのにとりあえず”コロナ給付金!!”で、懐事情が温まった人が、投資デビュー。その結果、利用者の51%は投資初心者。
中にはゲームや、オンラインカジノ代わり(?)で投資をしている人がいるのでは?としか思えない、テスラ株の急騰と急落のジェットコースター現象、ハーツ株の理解不能な動きなど、マーケットの台風の目となっており、注目されている方も多いのではないでしょうか?


金融リテラシー向上は”プロ個人”への一歩

では、なぜ、ロビンフッダーの話を今回コラムとして書いているかというと、今後、働く個人にとって、金融リテラシーというのは、とても重要な役割を果たすと思うからです。

働く個人にとって、金融リテラシーを高めることのメリットは、あえて言うまでもなく、以下の3つです。

◆1.お財布が増えることの”安心感”

◆2.投資を契機に社会や経済の動きに敏感になれること

◆3.自身の将来設計やキャリアについて、より深く考える契機となること

 

そして、一人ひとりの金融リテラシーを高めることは、働く個人にとってはもちろん、企業にとっても、「社員のプロ個人化-自主的&自立した個人の育成」という点で人事的な側面から見たメリットがあると思います。


 

◆1.お財布が増えることの”安心感”

一足お先に急回復した株式市場と同様に、実態経済も、今後、ワクチンの開発などが進み回復のペースを速めると希望を持って日々を過ごしているものの、2020年の3月以降、人の流れやモノの流れが止まり、人命優先のため仕方がないとは言え、経済面で大きな深手を負ってしまったことは事実です。

実際に、内閣府が8月17日に発表した2020年4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価の変動を除いた実質で前期比7・8%減、この状態が1年続いた場合の年率換算は27・8%減となり、戦後最悪のマイナス成長とのこと

-ソース:2020年4-6月期GDP1次速報値 (2020,8,17発表)

この結果は、ある程度の予測がついていたことですし、底打ちを示すデータであると解釈できたとしても、実際の数字を改めて示されると、その傷の深さを実感します。

 

また、昨今のニュースの中で、特に、個人的に気になっているのは、上場企業において、早期・希望退職者募集をする企業の数が増えているというニュースです。

東京商工リサーチの発表によると、2020年上半期(1-6月)に早期・希望退職者募集を実施した上場企業は41社(延べ43社)におよび、2019年同期比(18社)では2.2倍増と急増。上半期で40社超は、リーマンショック後の2010年上半期の66社以来、10年ぶりとのことです。

 

-ソース;https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200703_02.html

 

当然ながら、社会全体の経済が傷つけば、企業の業績も傷つき、企業業績が傷つけば、社員に配るための原資も少なくなります。
よって、働く個人が、直接的な経済的不安、それは免れても、この先どうなるだろうといった精神的な不安を抱えることは、当然です。

 

だからこそ、給与以外の所得があることは、もう一つのお財布を得るのと同じこと。

 

自分が働くだけでなく、お金にも働いてもらっているという安心感は、マズローに聞くまでもなく、欲求の第一段階である、「安心・安全の欲求」を満たすことに繋がります。

「人生100年・老後に必要な資金2000万円」が話題になった際に、投資に関心を持つ人も増えたと言われていますが、このような社会的な非常時こそ、お財布が複数あることの安心感は、非常に大きいのではないでしょうか?

 

 

◆2.投資を契機に社会や経済の動きに敏感になれること

金融リテラシー向上の2つ目のメリットとしては、投資を契機に、社会や経済の動きに関心を持つことではないでしょうか。
自分のお金がかかっていると思うと、普段から、社会や経済のニュース、企業の動向、関連する市場、為替まで、より貪欲に、ニュースに目を凝らすようになると思います。

普段の生活や、日常生活の中でも、「今、こういうものが流行っているんだな」と関心を持ったり、社会課題や、政治、経済への関心の持ち方も、投資というフィルターを通して見ると、今までとは少し違ってくるようになると思います。

米国関連の株投資を契機に、改めて英語ニュースを日々チェックすることが習慣化して、英語力がアップしたなどという話も。

このように、社会や経済に関心を持つということは、結果として、自身の投資にプラスの影響を与えるだけでなく、例えば、営業トークに役立ったり、自分のビジネスに役立つヒントを他業界の情報から得るなど、本業においても、役立つことが多いと思います。

 

◆3.自身の将来設計やキャリアについて、より深く考える契機となること

メリットの3つ目は、自分の将来設計やキャリアについて、より深く考える契機となるということ。

自分自身を振り返ってみれば、自身のキャリアプランを考える時間より、「今日のご飯に何を食べようか考えている時間」、「楽天やAmazonで欲しいものリストを作成している時間」の方が、圧倒的に長いです。

しかし、ざっとでも、お金に換算して

1).自身の理想の働き方、生活の仕方を具体化する上で、必要な費用

2).自身が、今後稼げるで”あろう”費用

3).1-2=理想と想定の差

=え-、じゃあ、どうすれば?

と改めて、真剣に自身のライフプラン、自身の今後の働き方・キャリア計画への展望に向き合わざるを得ません。

特に、「3).理想と想定の差」を考えるにあたっても、「2).自身が稼げるで”あろう”費用」は、社会全体が今までの年功序列を維持しきれないと声を上げ始めており、将来は、今後、ますます不確かになるいっぽう。

だからこそ、本気で理想と想定の差をどうにかしようと考えたら、自分の得意・不得意を棚卸して、自分の今後のライフプランや、キャリアプランを、どうしたらよいか、真剣に考えざるを得なくなります。

 

ある意味で、”心優しい企業”は、たとえば、新人社員教育や、女性向け教育、役職定年を控えた40代後半の方向けなどに、自身の今後のキャリアプランを考える研修を実施してきましたが、そもそも、会社は、GIVE&TAKE。

会社は、今後、明確なキャリアプラン/キャリアステップを考えている人には、会社の成長と個人の成長をすり合わせ、支援していくというマネジメントスタイルを取っていくと思いますが、”ただなんとなく、会社に来ている人”に対しては、それなりの対応を取っていく流れが加速していくと思われます。

 


プロ個人化-人生の”コントロール権”を手に入れるための武器作り

プロ個人とは、簡単に言えば「自分の生き方や暮らし方に関して自分で決める”コントロール権”を自分の手に持っている人」です。

自分で決める”コントロール権”を手に入れる武器としては、専門知識や、今まで培ってきた経験、各種の繋がりなどがあると思うのですが、経済的な面で自立していることも、自分の人生のコントロール権を手に入れる上で、非常に重要だと思います。

そして、この経済的な自立を考える上での第一歩が金融リテラシー(金融に関する知識や関心)ではないでしょうか?

コロナ禍の中で、ロビンフッドを開始した米国の若い人に対しては、もちろん、ゲーム感覚で始めた人も少なくないのかもしれませんが、人間的な逞しさを感じて、とても羨ましいと思いました。

 

会社にとっても、自律的な個人が集まったプロ個人の集団こそ、これからの時代に必要なのではないかと感じています。

 

まあ、うちの社員の中にも、朝の9:00前後と、15:00前後になると、妙に”ソワソワ”して、PCの前にかじりつきの社員もいますが・・。

弊社の中でも、複数のお財布の重要性を普段から話している手前、「1番大きいお財布を失うことがないようにね!」とだけは注意しています。

 

 

 

 

この2つの絵が、同じ場所を描いているように見えますか?

1).出典;オルセー美術館

https://m.musee-orsay.fr/en/works/commentaire_id/dance-at-le-moulin-de-la-galette-7083.html

ムーラン・ド・ギャレット ルノワール

Dance at Le Moulin de la Galette
1876 Auguste Renoir

 

 

2).出典:グッゲンハイム美術館

https://www.guggenheim.org/artwork/3411

ムーランドギャレット ピカソ

Le Moulin de la Galette
1900 Pablo Picasso


 

1)は、ルノワールの代表作、「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」という作品。

ルノワールの代表作の1つなので、あまり絵に関心がない方も、どこかで見たことがある作品ではないでしょうか?

そして 2)は、ピカソの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」です。

1)、2)ともに、同じパリのダンスホール、「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を描いた作品です。

 

ずいぶん、印象が違いませんか?

 

まず、1)のルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会 (Dance at Le Moulin de la Galette)」は、この作品を所蔵しているオルセー美術館の作品紹介のところにも、

”Renoir‘s main aim was to convey the vivacious and joyful atmosphere –(以下略)”

とあり、”ウキウキした、快活で楽しく喜びに満ちた雰囲気”が、こちらにも伝わってくるような作品です。

太陽のもとに、着飾って、おしゃべりして、踊って、楽しんで・・。

個人的に、ルノワール好きではありませんが、ルノワールらしい、「多幸感」の詰まった作品だと感じます。

 

その一方で、2)のピカソ、19歳の時の作品、「ムーラン・ド・ラ・ギャレット(Le Moulin de la Galette)」。

どちらかと言えば、ロートレックのムーラン・ルージュに近い印象。しかし、ロートレックのような、明るくからっとした猥雑さというより、よりウェットで、ソドムとゴモラ感が強調されている感じ。

私は、このピカソの作品がルノワールの描くムーラン・ド・ラ・ギャレットと同じ場所を描いていることに全く気が付かず、中野京子さんの本でこのことを知った際は、一種の衝撃でした。

 

このムーラン・ド・ラ・ギャレットの2枚の絵と同じように、同じ組織であっても、見る人の立場や場所(部署)によって、会社の見え方が全く異なるということは、とてもよくあることです。まあ、組織における「ムーラン・ド・ラ・ギャレット現象—-ルノワールvs.ピカソ対立現象」とでも名付けましょうか?


 

特に、この「ムーラン・ド・ラ・ギャレット現象」を感じるのは、 社員意識調査を組織の階層別に分析する際のこと。

 

1).会社の上層部が自分の会社や組織に思い描くのは、総じて、ルノワール的な世界

2).一方で、一部の一般社員(/一部の部署の社員)にとって見えているのは、ピカソが描くような世界

 

ある意味で、上層部の人がPositiveに会社を見ているのはよくあることですし、逆に、会社の経営層や上層部が、Positiveでなくては困るという一面もあるのですが、同じ会社なのに、階層別分析や、部署別分析の結果が、まるで、昼と夜、幸せと厭世のような対比の世界がデータから浮かび上がるということがよくあります。

 

自分自身の見え方と、自分の部下との見え方の違い、自分の部署と、他の部署との間で、組織や会社の見え方の違いがあるだろうなとは薄々は感じていても、どうしても、自分の見え方を前提に組織運営を考えてしまうのは、よくあること。

 

だからこそ、社員意識調査を行うメリットの第一義は、「自分の見え方が全てではなく、自分とは異なる見方をしている人が、社内にいるということに気づく」ということ

だと思います。

 

特に、

◆会社の経営層やマネジメントをする立場の人が、

◆自分が見えていると思っている姿が全てではなく、部署や役職・階層によって、こんなにも見え方が違うということに気がつくこと (意識ギャップ)

◆その意識ギャップについて、単なる直観ではなく、データとして計測された裏付けを持って事実(FACT)を正しく認識し、そこから、何をすべきかの議論を始めること

 

が、大事。

気づきがなければ、何をすべきかを考える機会が生まれず、正しい事実認識がなければ、やるべきことも的外れとなってしまいます。

 

 

ちなみに、仮称、”社員意識調査における「ムーラン・ド・ラ・ギャレット現象」”について、もう少し補足&要約すると、

1.描く人の違い:
人や立場による見え方の違い

2.視点・視座の違い(昼と夜の違い):
Positiveな面にフォーカスをするのか、Negativeな面にフォーカスをするかの違い

に加えて、

3.時間軸の違い

があります。

時間軸の違いについては、ルノワールの1)の作品は、1876年のもの、ピカソの2)の作品は、1900年のもの。つまり、24年の年月の違いは、実は無視できません。

 

種明かしというか、これを言えば身も蓋もありませんが、ルノワールの作品とピカソの作品の違いは、描く人の違いや視点・視座の違いというより、要は時間経過による変化ー事実そのものの変化を示しているだけなのかもしれません。

 

*だからこそ何が事実かを検証するためにも、社員意識調査は、”データ(FACT)に基づくもので、定量的な視点と定点観測が必要という戒めの意味をあるのですが・・・。

 

ただ、社員意識調査に当てはめて考えてみると、「会社の寿命30年説」という言葉にもあるように、はじめは、キラキラ、幸福感に包まれていた組織も、年月を重ねると、滓が積もって、かつての姿と大きく異なる場合がある、ということを考える上で、「3.時間軸の違い」は、定点観測の重要性という意味で大事だと考えます。

 

変化には、良い変化と悪い変化があります。

良い変化は喜ばしいことですが、その反対に、「かつての良かった日々が今日も続いているという勘違い」から、組織の変化に気づかずに、いつのまにか、取返しがつかなくなってしまった組織があることを、企業の栄枯盛衰の歴史が教えてくれています。

 

今は、アフターコロナ/ウィズコロナで、組織の在り方も大きく変化しつつある時です。

VUCA
-Volatility(変動性・不安定さ)、

-Uncertainty(不確実性・不確定さ)

-Complexity(複雑性)、

-Ambiguity(曖昧性・不明確さ)

な時代だと改めて感じる時。

 

こうした変化の中だからこそ、人事やマネジメントにおいてもタイムリーに、データドリブンで、会社の中で何が起こっているかを把握することが重要なのではないかと思います。

KFSの社員意識調査は、フォーマルな形で行う「正規版」のような形態だけでなく、パルスサーベイのような簡易版、1テーマに沿って少ない設問で実査から報告書作成までをタイムリーに行うテーマ調査も行っています。
改めてマネジメントツールとして、社員意識調査を役立てていただけたら幸いです。

Make sense:ロングマン辞書より

1).to have a clear meaning : to be easy to understand
 明らかで分かりやすい

2). to be a sensible thing to do,reasonable
道理にかなう、筋が通る、理解できる

 

 

組織の一員として、また、社員意識調査を通じての多くの企業様とのお付き合いの中で、今、コロナ禍のもと、働き方を見直さざるを得なくなり、それに伴い物理的なオフィスの意味や、仕事の進め方、人材育成の仕方、能力評価など、マネジメントのあり方も、大きく見直す契機となっていることを実感しています。

 

最近、当社にも、こうした環境下の中での社員の意識に対する相談はもちろんのこと、喫緊の課題として、新しい時代にあった部下マネジメントに悩む管理職の方のとまどい・不安の解決や、リモートワークのもとでの隠れパワハラなどをあぶり出したい、などというご相談が寄せられています。

 

一つ言えるのは、こうした時代だからこそ、マネジメントに求められるのは、”Make sense” という意識ではないかということ。

”Make sense”には、上記にあるように、

1).明らかでわかりやすい、クリアなこと

のほか、

2).それは道理にかなっている/筋が通っていると思う

という2つの意味があります。

 

直接、顔を合わせて伝える機会が今までよりも減少したり、マネジメントの仕組みが変わらざるを得ないからこそ、

1)”わかりやすさ”が大事になってくる(Clear/Easy to understand)とともに、

 

その方針や仕組みについて、

 

2).”それって道理にかなっているよね”と社員をはじめ、会社に関与するステークホルダー皆が思えること

 

が、より大事になってきているように感じます。

 

皆様の会社では、”Make sense”にどのように取り組まれていますか?

 

コロナ禍のもと、「ソーシャルディスタンス」という言葉が、ニュースから流れない日はないのではないでしょうか?

 

このソーシャルディスタンスについて、面白いと思ったのはメキシコのケースです。

出展:https://coronavirus.gob.mx/multimedia/

出典:https://coronavirus.gob.mx/multimedia/

「ニュース モーニングサテライト」で取り上げられていたのでご存知の方も多いかもしれませんが、メキシコで、この「社会的距離を始めとするコロナ対策」について、皆の理解を深めるのに一役買っているのが、コロナと闘うスーパーガール、スサナ・ディスタンシア (Susana Distancia) です。

「ス(女性名詞) サナ(健康) ディスタンシア(距離)」≒要は、「私たちの健康的な距離」という意味だそうです。

決めのポーズは、両手を広げてウイルスが近づくのをブロック。

最初は、子供向けの情報発信方法として考えられたそうですが、年齢の枠を超えて、浸透度が高いとのこと。サイトにアクセスすると、スサナのイラストをアップしたインスタ画面がたくさん表示されていて、ホントにちょっとした人気キャラクターなんだなと思いました。→詳しくはこちら

 

“中の人”は、メキシコ保健省の人で、日々、コロナに関連するニュースをテレビはもちろん、SNSなどを通じて、情報発信をしているということ。
中南米にもコロナが広がり、死者数が増えているのは悲しいことですが、その中で、政府が国民とこのような形でコミュニケーション・情報受発信を取ってく姿は、「ナッジ」を使った良い例だと感じました。

 

ナッジと(Nudge)いうのは、行動経済学の用語で「軽く肘でつつく」、という意味。

2017年のノーベル経済学賞受賞者のリチャード・セイラー(Richard H. Thaler)の定義によると、
「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を行動予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素」だそうです。

私が「ナッジ」を他の人に説明するときには、「ヒトの考え方や脳の癖を利用して、ちょっと“くすっとするやり方“や、“なるほどね、こうきたか!”と思わせるやり方で人々の行動を良い方向に導くこと」と言っています。

 

たとえば、行動経済学の本などで良く取り上げられている事例が

・「トイレをきれいに使いましょう」の代わりに、「男子トイレの便器に書かれたハエの絵」

だったり、

・不法投棄の多い場所に「この場所でゴミを捨てるのは禁止されていますと書かれた看板」の代わりに置かれた「お地蔵様」や「鳥居」

などなど。

確かに、押し付けがましくないし、なんだか楽しい。今までのやり方より、よっぽど効果があるように思えます。

 

そういった意味で、スサナの事例は、ナッジを使った事例かどうかは、本来、議論があるのかもしれませんが、私の中では「ナッジ」です。

 

コロナ禍で、働き方のスタイルが変わると、人にも組織にも、良い面だけでなく、“あれっ”と思う面が、見えてきます。

また、「今まで問題だったけれども、触れずに済んでいたこと」にメスを入れなければならない場合も当然のように出てくるでしょう。

 

働き方が大きく変わるからこそ、組織によっては、強く決断力に優れた信長やチェーザレ・ボルジアのようなマネジメントスタイルを待望するところや人もいるのかもしれません。

 

ただ、
「私はいつでも学ぶのにやぶさかでないが、教えられるのをいつも好むわけではない。
(I am always ready to learn but I do not always like being taught.)」

-ウィンストン・チャーチル

このような扱いにくい誇り高き、でも優秀な、“大人の社員”を多数抱えている会社では、仕事に対してプロフェッショナルとしての厳しさがあることは前提なのだから、それ以外のマネジメントの面で、ユーモアの力-“ナッジを上手く使っても良いのではないかと思います。

 

*最近は、世界各国でこのナッジへの取組みや研究が進み、OECD(経済協力開発機構)では、BASIC(ナッジの設計プロセスフロー)に関する情報も公開しています。興味のある方はこちらへ。

 

ナッジは、行動経済学的知見を用いて、人々の行動をより良いものにするように誘導するものですが、その逆に、行動経済学的知見を用いて、人々の行動を私利私欲のために誘導することを、「スラッジSludge(スラッジ=汚泥)」と呼びます(例えば、サブリミナル広告など)。

 

ナッジとスラッジの境目に何があるかというと、それは「倫理観」。

働き方が今までと変わってくると、不安を感じたり、ストレスを感じたり、疑心暗鬼に思うのは当然だと思います。
上司の部下に対するマネジメントスタイルも、評価・報酬を始めとする会社の制度も、これから変わらざるを得ないでしょう。

ただし、人と人としての信頼感や、「倫理観」というのが、結局マネジメントの背骨にあることが大事なんだと、改めてこの時期だからこそ感じています。